遺体管理学

           Human remains Lab


















水原市の対応

水原市では火葬・葬儀場である「水原蓮華蔵」では 
セウゥル号被災遺体に対して優先火葬を行い、火葬票を
無料とした
また、遺族や弔問者に対する
食事等は教育庁が負担する
(韓国では火葬炉不足から、
火葬まで4日程度の待ち時間が必要)




収容された遺体

収容・回収された遺体は
彭木港の遺体安置場で検視と
身元確認を行い、安山市に
福祉部(韓国では葬儀は福祉部の所管)が用意した斎場で
葬儀を行う(安山檀園高校生)




韓国政府の対応

韓国政府は、セウォル号被災
遺体の葬儀に用いる葬儀用品を、無償提供すると決めた




遺体取り違え

遺体の取り違えによる
「誤遺体引き渡し」が多発する
4月23日時点で6遺体




詐欺事件が多発

遺体安置場で公務員を装い、
「教育庁で費用を出すので、
特定の葬儀社に契約する様に」との葬儀勧誘詐欺が発生
被災者家族を装い、支援物資の搾取や無料飲食を行う
補償金搾取目的で、病死した
父親の遺体を事故周辺海域に
遺棄する
1000万円を払えば、「子供を助けてやる」とのブローカー

日本の阪神淡路大震災や
東日本大震災でも、
遺体安置場にたくさんいました









セウォル号(SEWOL)の遺体



                生存の可能性が皆無となったために、公表します

                     無断転載、無断引用は認めません
                政府機関、司法、警備、軍機関の使用は自由です






                            セウォル号沈没事故


 2014年4月16日午前8時58分、全羅南道珍島群沖の海上で転覆し沈没。
乗客467名が乗船しており、死者不明者数300人以上の海難事故であるが、「人災の可能性が高い」。




                             遺体の周囲環境


 沈没時の海水温度(表面)は16℃であり、それ以降は11℃付近(11.6℃)を持続し、沈没地点が水深40〜50m付近。
水圧は5〜6気圧であり、推定水温は7〜8℃(5〜8℃)と考えられ、遺体の多くは水流のない船室内(通路等を含む)に存在すると考えられる。
遺体のある場所により水圧は異なり、完全密閉状態であれば「水圧は低い可能性」もある。
地上環境での気温は14〜15℃、湿度に関しては正確なデータがないが60%近いと考えられる。
水中の水温は安定しており、水流による「遺体のローリング」は少ない(船舶内遺体の場合)。




                                 死因


 韓国政府及び司法当局からの最終的報告がないために推定であるが、溺死(溺水)または窒息(乏酸素性も含め)、
低体温状態によると考えられる。
完全沈没から14日以上が経過しており生存の可能性はほとんどない。
エア・ポケット等に避難したとしても沈没から72時間以降の生存率は非常に低く、水深50m状態での避難場所気温や水温は
10℃以下であり、長時間の生存は厳しい状態と考えられ、多くは沈没時または沈没直後に死亡した「急死体」と考えられる。




                           回収後の遺体について


 事故発生時の水温及び気温は「安定状態」であり、災害被災遺体としては「死亡から24時間以内は安定した状態」と言える。
特に、報道で見る限りは回収された遺体に「後期溺死体特有象徴」が見られず、漂母皮化や泡沫状気泡を除けば
「良い状態」と判断できる。
特に納体袋で搬送される遺体の画像では「土左衛門状態」を想定できない。
 1.腹部膨満や皮下気腫による納体袋の膨張がない
 2.手及び脚の拡大による納体袋の拡張がない
 3.遭難時の水温が11℃台であり、遺体の初期収容が早い時期に行われた

 しかし、収容後の遺体は「遺体安置場」に搬送され当局の死因確定や個人特定が行われており、
遺体周囲環境と時間経過が問題となる。
韓国には葬儀に関する学部があり大学での葬儀教育が行われており、「教育としては日本より遥かに進んでいる」と言える。
しかし、大学教員にはアメリカの葬儀専門学校で葬儀を履修して、アメリカの葬儀とエンバーミングに関する州資格を取得後に、
アメリカの葬儀社に従事した者は存在するが、「あくまでも従事経験であり、専門家と言えるかは不明」(従事者=専門家ではない)で
あり、「遺体管理学の専門家は韓国には不在(日本にも不在)」と考えられる。(ソウル市内にもエンバーミング施設はあるが、あくまでも葬儀社)
また、韓国では大規模災害は少なく「大規模遺体対応のシステムがない(または不備)」と言える。
これは、日本においても「東日本大震災後に多数遺体管理」に関する文献集めが始まり、自治体や司法機関が本格的にマニュアル化
したのと同じであり、システムの遅れ不備は非難できない。

 水中遺体の収容や回収で難しい点は「収容や回収後の遺体管理」であり、今回の被災遺体に関しても同様である。
既に収容された遺体は良い状態であり、これから回収される遺体も「安定した環境下、状態にある」と考えられ、回収により地上に
出された遺体は「遺体周囲環境の大きな変化により、急速に遺体変化が進む」と考えられる。
 1.水温7℃から気温15℃以上の遺体周囲気温変化
 2.5〜6気圧下から1気圧下への対気圧変化(船舶の破損状況、密閉度により対遺体外圧は変動する)
 3.体位変動のない安定状態から、遺体体位変動(収容や回収、検視や解剖、搬送)、身元確認や着替え等による細菌拡散

 遺体の腐敗を引き起こす細菌は「水深50mの水温では死滅せず」、収容や回収されて「外部環境が好転する」と爆発的速度で
遺体内で増殖し、遺体に対する外圧(遺体を動かす等)により、腐敗原因細菌は全身に拡散する。(誘導期から増殖期へ)
遺体は強い陽圧下では腐敗拡散が遅延するために、水深50m状態では遺体状態は安定している。

 そのために、気圧変化を抑制することは困難であるが「遺体温度の変化を最小限に抑える」(クーリング処置)を持続しなければ
気温25℃下(20℃から危険)では、「劇症型死後変化」(死亡後環境型)が生ずる。
持続クーリングを行わずにエンバーミングを行う場合は、「回収後6時間以内」に行わなければ効果は低い。

 韓国は儒教思想が強く「国民は皆家族」との意識があり、「冷たく暗い海の底から出てきて、また冷やすのは可哀そう」との考えが
あるが、「安定した遺体状況を保つためには、クーリング(特に胸・腹部)は必須」と言える。
遺体を傷つける行為は禁忌(儒教思想)の韓国であるが、4月22日以降は「遺族の申し出による解剖」が行われる様になった。(東亜日報)
特に、これから始まるサルベージは困難な作業であり、遺体の収容や回収までは時間を要するために「夏季対応」も考慮が必要。
本来、遺体は個別収容が基本であり遺体毎管理を行う必要があるが、サルベージ回収であればリスクは高まる。

 スマトラ沖地震で収容された日本人遺体には「死蝋化現象」が見られたが、現場水域での遺体死蝋化の可能性は低いと考えられるが、
収容や回収までに60日程度を要する場合は、「遺体の死蝋化や海洋生物による損傷」を考える必要がある。
(1983年9月の大韓航空機爆撃事件の269人死亡事件の時と同様)
特に、海洋生物損傷は早期から必然的に生じる(露出部分から)ために、個人特定はDNA鑑定が重要となり「修復」が必要となる。
死蝋化した遺体の顔修復は「非常に難しく」、現状の韓国レベル(日本も同様)では極めて困難と言える。(これは中国の方が上手い)

 5月に入り、事故現場から4q離れた島に遺体が漂着しており対策が必要となる。
漂流遺体は「死亡現場から距離が離れる、時間が経過するほど悪化」するために、死亡現場や浮上直後の回収が基本となる。
また、漂着場所が岩礁や岩場では遺体の損傷が激しくなり、これは砂場(砂浜)であっても表皮擦過現象が激しくみられるために、
「漂着前回収」が望ましい。
特に、漂着後は「細菌誘導期を逸脱し、増殖期に移行」(遺体深部温度の上昇)が発生して急激に腐敗症状が進行する(劇症型腐敗現象)。
その意味でも、「水中遺体回収」を徹底する必要がある。                               (追加  2014. 5. 6)


                                                2014.4.29
                                                         遺体管理学      伊藤 茂