遺体管理学

           Human remains Lab







































































 











































問題点と見解



                               商用使用厳禁

          個人使用、教育(正規の高等教育課程)・学術研究、院内研修目的での使用は認めます







                          K市火葬場問題

 K地方K市営の火葬場において、「ペースメーカ事件」が発生しました。
そのために、この市営火葬場では「棺内の危険物・不燃物の入れ込み禁止について遺体に装着されている
ペースメーカーは爆発事故を起こすために大変危険ですので、必ず病院で取り除いて下さい」と明記しています。
国内の火葬場は「東京23区内を除くと、99%が公営」であり、市町村職員またはPFIの委託職員(民間)が
火葬業務に従事しています。
そのために、直営方式では「市町村の現業職員」が担当しており、これらの直営施設で「ペースメーカ拒否」が多いようです。

 厚生労働省では国内関連学会の要請や3.11震災時の火葬対応を踏まえて、厚生労働科学研究として「大規模災害時における
埋火葬の在りかたに関する研究」として、「全国火葬場の施設状況並びに防災対策に対する調査 調査票」(全国火葬場
調査アンケート)を平成24年10月1日現在状況として行いました。  ( http://www.j-sec.jp/zenkoku.Excel.xls )
平成25年1月18日が調査票締切日ですので、25年秋頃には集計結果が公表されると思いますが、この調査には
「ペースメーカ」に関する部分が多くあり、「大規模災害時」だけを想定しない平常時の「ペースメーカ事故の実態と拒否行為」
掌握も兼ねていると考えると頷けます。

 K市営火葬場が「ペースメーカ遺体強硬策」に出たのにはわけがあります。
K市営火葬場で火葬を実施中に「破裂音」が響きました。
その後、再び「破裂音事案」が発生しましたが、ともに「ペースメーカ装着事前申告のない遺体」でした。
そこで、市役所担当部署を通じて「2例の死亡診断書」を確認したところ、K市立病院であることが判明しました。
火葬場担当者がK市立病院の担当医(死亡診断を行った医師)へ確認をしたところ、「最近のペースメーカは材質が変わり、
火葬でも破裂しないために取り出しや事前申告は必要ない」と言われました。 (情報源はメーカー営業との話し)

 その結果、ペースメーカ装着時は「事前に申し出て下さい」から、「必ず病院で取り除いて下さい」となりました。
本来は、家族や葬儀社を通じて「ペースメーカ装着遺体である旨」を火葬場に伝えていれば問題となる事案ではありませんが、
火葬場職員も病院職員も「ともにK市職員」であり、間違いを認める、人に頭を下げる習慣のない「公務員、医師」であり、
話しがこじれて「ペースメーカ患者さん(遺体)」にトバッチリが来ました。
そして、尾ひれがついて話が肥大や捏造されて「ペースメーカは爆発事故を起こすために大変危険」となりました。

 「新タイプのペースメーカは破裂しない」と考えた医師(医療従事者)、メーカの営業担当者(本当に言ったかは確認できない)、
「事前申告がなかったことに憤慨」した市営火葬場職員による問題であり、患者さんや家族が不快や不便な思いをしています。
科学的根拠(エビデンス)を考えれば問題とならない事項ですが、知識や認識の格差、意地の張り合いと誤情報が招いた
結果とも考えています。






                       誤情報の訂正と使用禁止

 医療従事者の記載においても、「爆発」と記載されている物があります。
これは、「良性腫瘍 = ガン」と誤認識しているのと同じく、患者さんや家族に不安を与えることとなります。
ペースメーカは「破裂でなく爆発する」と考えている人達や誤情報が多い中で、正しい認識を広めることは容易ではありません。
少なくとも専門教育を受け国家試験に合格し、医療に従事している者は「正しい認識と正しい情報」を持たなければなりません。
医療機関、医療従事者、教育者、学会や業界団体、患者会やマスコミは、「爆発でなく破裂」と認識をして
統一の見解や記載をしなければなりません。

 医療従事者が「ペースメーカは爆発する」と言っている限りは、葬儀社や葬儀業界、火葬場職員も
「ペースメーカが爆破した」等の情報を発信します。

 2012年に宮崎の火葬場でペースメーカが爆発して「火葬場職員が失明しかけた」との情報が氾濫していますが、
火葬場に関する協会でも「出所を探しています」が、都市伝説的情報であり元を辿っても「その様な話を聞いた、噂を聞いた」
であり、宮崎県内の火葬場に問い合わせてもわかりません。

所沢市斎場の案内   以前は、「ペースメーカは取り出してください」でしたが今は「事前に申し出てください」に改善した。
                 未だに、「ペースメーカは爆発して危険」と記載している施設が多くみられ、PFI火葬場に多い。




                      遺体管理学としての正式見解

 ペースメーカは火葬により火葬炉内で破裂しますが、「爆発はしません」
大きな「破裂音」(風船と同じ)が生じますが、実害が出るわけではありません。

破裂時に生じる破裂片飛散があり、火葬炉内飛散時に火葬炉内耐火材に当たりますが、これにより耐火材を割る等の
大きな毀損は少なく、火葬炉の耐用を損ねるレベルではありません。(耐火材は定期的に張り替える必要がある)
破裂ペースメーカ片が炉内セラミックに「刺さる」程度の問題です。

耐火材も現在では「セラミック製」であり、旧来の火葬炉内材料と比べると、破損は生じにくい構造となっています。
飛散片による火葬場職員の受傷事故確立はゼロではありませんが、「10年に1度程度(1,000万回に1度)」であり
針刺し事故よりも確立的にははるかに低い。(針刺し事故の可能性がゼロではないので、注射針の使用を禁止する様な考え)
受傷事故は火葬場職員側で防げる部分が多く(点検口は開けない、常に点検口ガラスを掃除する等)、着火後30分(15分)は
点検口を覗かない等で受賞事故確立は更に下がります。 (火葬場マニュアルでは点検口ではなく点検孔とされている)

 「火葬場の建設・維持管理マニュアル −改訂版-」によれば、「着火後10〜15分くらいで発生することが多いので、
この間は点検孔から覗きこまないようにすること、また、やむを得ず覗く場合は、防災面を装着の上で作業を行うこと」
記載されており、これらの時間や防護用具を使用すれば、被災確率は著しく低下して受傷事故はないと考えられます。
ERにおいても、10年ほど前は「防護グラスや防護ガウン」の使用は稀でしたが、これは現在ではスタンダードであり
「自己防護」は当たり前の行為です。

 火葬場職員も「自己防護意識」が高まれば防護面や防護グラスの使用を行うはずであり、管理上の問題で回避できます。
実際に、棺の中に入れられた使い捨てラーターや缶飲料、湯たんぽ等で同様のことが起きています。(ライターは爆発)
棺の中に入れられた物による問題は「葬儀社の責任」として火葬場は対応していますが、ペースメーカに関しては
責任の所在が不明確であるために「取り除くこと」となっています。

 しかし、破裂音を除けば「ペースメーカ植え込み遺体」を火葬してもほとんど問題がないのが現状であり、破裂による遺体の
損傷に関しても「確認できていません」。
そのために、遺体を傷つけてまで「火葬ためにペースメーカを取り除く必要性はありません」
これは、血液等の検体を取り扱う臨床検査技師が、「事前に肝炎患者さんの血液検体」と知らされなかったから2次感染した、
危険にさらされたと置き換えられ、「全ての検体は感染源になり得る」と認識しない個人や職場環境の問題であり、肝炎の
患者さんや看護師に責任転嫁することはあり得ません。
以上の考えにより「ペースメーカ取り除きは必須ではなく」、下記の事項を明言できます。

1. ペースメーカの除去は必ずしも必要ではなく、火葬場に対する「ペースメーカ在り」の連絡で対処ができる
2. 火葬場は「ペースメーカが在ること」を理由として、火葬を拒否できない(民間火葬場を除く)
       ■第13条[管理者の応諾義務]
         (1)  墓地、納骨堂又は火葬場の管理者は、埋葬、埋蔵、収蔵又は火葬の求めを受けたときは、正当な理由がなければ
         これを拒んではならない。
    墓地、埋葬等に関する法律 墓地、埋葬等に関する法律施行規則
    厚労省アンケート調査では、約10%が「ペースメーカ植え込み遺体の火葬拒否」を明示していますが、
    現場としては、「ペースメーカを除去せずに来た遺体も、受けざるを得ない」と考えています。
    特に、公営火葬場のPFI化(新規または建て替え)と指定管理者制度化が進んでおり、旧来の現業公務員時代
    よりも「柔軟な対応」が進んでおり、実際に拒否をする事案はゼロに近づくと考えています。
    また、火葬場管理者等の任命(墓埋法第12条)及び、火葬技術管理士の導入も改善につながります。

国内で、火葬を所管する担当省庁は厚生労働省であり、担当者は1名しか居ません。(日本国内に1名だけ)
この1名が、墓地、埋葬法に基づき年間100万件以上の火葬、年間110万件程度の埋葬と改葬を担当しています。
2012年4月に着任した担当者は2013年3月には移動となり(わずか1年間)、2013年4月からは新しい担当者が1名で
国内全てを対応していますので、「国内でペースメーカ遺体に対す施策や通知が出されることは絶望的」です。
そのために、厚労省に頼ることは意味がなく、「火葬場サイドへのアプローチ」が最も有効な改革です。
厚労省の火葬担当職員は1名である上に「ローテーションが非常に短くいために、腰を落ち着けての対応」は望めません。



                                                 死体管理学教授      伊藤 茂


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