遺体管理学

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ペースメーカと火葬 



                         商用使用厳禁

        個人使用、教育(正規の高等教育課程)・学術研究、院内研修目的での使用は認めます







                     国内でのペースメーカの現状

 この項では、ペースメーカ、ICD、CRT-D等の「体内植え込み型刺激装置」を総称して、「ペースメーカ」として扱います。
一般社団法人日本不整脈デバイス工業会(旧 ペースメーカ協議会)の資料によると、2012年の日本国内のペースメーカの
新規埋め込み 38,893件、交換 20,548件(合計 59,441件)の手術が行われました。
ICDでは新規 3,655件、交換 1,939件(合計 5,594件)、CRT-Dでは新規 2,439件、交換 932件(合計 3,371件)とされています。
総務省(平成23年3月)の報告書では累計で国内に30〜40万人の患者がいると推定されており、その多くが65歳以上の高齢者で
あり、国内死亡者における「ペースメーカ装着遺体は1〜2%程度」と考えられます。

 日本の皆保険制度は世界でも最も優れた「医療保険システム」ですが、その反面に海外から見れば「過度の検査や医療」が
行われているとも見られており、海外基準では「適応外」の患者さんにも植え込みがされています。
そして、大きな問題として「国産のペースメーカはなく全て輸入品」であり、輸入先国としてはアメリカ、フランス、オランダ、ドイツ、
カナダ、オーストラリアであり、これらの国は「土葬率の高い国」で「火葬率 99.9%の日本」とは死後の考え方が違う点です。
医療では「患者さんが死んだ後は考えない」ことは基本(診療報酬がない)ですが、国内で植え込まれているペースメーカも
「火葬を前提に考えていない」と考えられる部分があり、日本では国内独自の考えが必要となります。







                         ペースメーカの破裂

 全てのペースメーカは「火葬により破裂する」と考える必要があります。
そして、医師やその他の医療従事者も「破裂と爆発」の違いを認識する必要があります。
グーグルやヤフーで「ペースメーカ 爆発」との語句で検索をすると、グーグル・ヤフートはともに 99,800件のヒットがあります。
非常に簡単な話であり、爆発とは「熱を伴う反応」であり、破裂とは「熱を伴わない反応」です。
ちなみに、「ペースメーカ 破裂」で検索をすると 55,700件のヒットであり、「誤情報の方が多い」ことが分かります。
ネット社会の功罪であり、「知識のはい人達が、誤った情報を広めている」ためです

 爆薬や爆弾、ガソリン等は熱を伴う反応であり「爆発」ですが、風船に空気を入れすぎた場合や冷凍庫に飲料水を入れた場合は
「破裂」であり、周囲に与える影響やその現象は全く異なります。
爆発は「周囲への影響が大きく」(ダイナマイトや爆弾、特に原子爆弾がそうである様に)、破裂は「周囲に対する影響が少い」
ために音や破裂片の飛散等と限定であり、悪影響はわずかなものです。

 ペースメーカ植え込み遺体やペースメーカを火葬や加熱処理を行っても「爆発は起こりえず」、世界中、少なくとも日本国内の
火葬場において「ペースメーカが爆発した例は1例もありません」
それでもなお、検索で 99,800件もの「間違った情報」が出ることが問題であり、これらを流布したり話す人達は「破裂と爆発」の
違いや、科学や医学知識のない人達です。
私も、国内の火葬場や火葬システムに関与していますが、「国内の火葬場でペースメーカが爆発した」との報告はなく
一部の葬儀社や葬儀関係者、知識のない火葬場関係者が「爆発した、危険だ」とから騒ぎをしているだけです。

 ペースメーカ埋め込み患者さんや家族に対して恐怖心を煽る行為、間違った情報を伝えたり拡散する行為は医療に従ずる者と
して、「絶対禁忌行為」であることは認識しているはずです。
爆発と破裂では原理も異なれば効果や影響も異なりますが、「患者さんの受け取る不安感」は更に大きくなります。
火葬場職員(行政)や医療従事者には「ペースメーカは爆発しない」と教えていますが、困ったことに葬儀社や葬儀関係者は今でも、
「ペースメーカは体の中で爆発するので危険」と恐怖心を煽っています。

 ペースメーカは構造上、理論的に「2度の破裂が生じますが、現実的には1度の破裂」しか認識できません。
これは、内臓の電池ケースの破裂と躯体(本体」)の破裂ですが、躯体内での電池の破裂は外部からはわかりません。
特に電池には、ベント(圧力ナベの排気弁の様な調整弁)があり、破裂を制御する措置があります。
しかし、躯体の方は「高度な気密性が必要」であり、ベントもありません。(福島原発でもベントが話題になった)

 そのために、ペースメーカ埋め込み遺体が火葬された場合には「躯体破裂」が生じます。(電池破裂は害がなく、確認できない)
これは物理的作用(爆発は化学的作用)であり、躯体(本体の材質)により周囲に対する影響も異なります。
材質が固ければ「破裂時の影響が大きく」、材質が軟ければ「破裂時の影響が小さく」なります。
これは、鉄の容器が破裂した場合とゴムの容器が破裂した場合を考えればわかるはずです。

CXの情報番組で漂着して腐敗により腹部が膨満したクジラの情報で、女性アナウンサーが「爆発する」と言っていました。
これに対して、菊川玲さんも「爆発する」と話していました。
女性アナウンサーはともかく、菊川玲さんは日本最高学府である東京大学工学部卒業ですが、才女をもって爆発と破裂」の違いが
解らない様なので、医師や看護師、葬儀従事者や市民では「爆発=破裂」と考えるかも知れませんが、爆発は「恐怖心を煽ります」。






                   火葬炉内で何が起こっているのか

 ペースメーカが火葬炉内で破裂することにより発生する現象は、下記の4点です。
1.破裂音
2.破裂片の飛散
3.破裂部周囲の影響(熱反応をとのなわないために、破裂風による影響)
4、風評

 破裂音に関しては火葬場職員であれば誰でも経験しており、珍しい事ではありません。
破裂音に関する問題としては、「驚いた」等であり実害の発生はありません。
破裂片の飛散は事実ですが、世界でも年間に数千万人の火葬が行われていますが、ペースメーカの破裂片による被災事故は
シンガポールと新潟の2例であり、正式な報告は聞いていません。(世界火葬協会及び国内の火葬に関する協会においても)

 被災事故はペースメーカ飛散片の直撃により発生し、火葬炉点検口の耐火ガラス窓をたまたま開けて確認した時(耐火ガラスが
煤で汚れた時)に、偶然に飛散した破裂片が5p程度の点検口から覗いている目を直撃して起こります。
日本の事故報告では、被災事故発生率は 0.0001%程度であり( HIV針刺し事故感染率 0.3% )であり、統計学的にはゼロと
判断をしても良いレベルです。 (少なくとも、医学や科学レベルでは「ほとんど起こりえない」と判断する)

 被災以外では、飛散片が火葬炉内耐火煉瓦を直撃して「耐火煉瓦破損」を起こす場合があります。
しかし、火葬場では「耐火煉瓦は消耗品」と認識しており、破裂片直撃がなくても定期的に交換しており、破裂片直撃による
緊急工事(耐火煉瓦張替)はほとんどありません。
「火葬場の建設・維持管理マニュアル −改訂版ー」(「火葬場の建設・維持管理マニュアル」 改訂委員会 編)においても、
ペースメーカ破裂片被害と修復は記載されておらず、日本環境斎苑協会( 厚生省所管 旧社団法人 環境斎苑協会)においても、
「ペースメーカ破裂片による被災事故や耐火煉瓦破損」は問題と考えていません。(私も 、1998年頃から関与しているが)

 これは、火葬炉や火葬技術が発展したことに加えペースメーカ躯体材質の「柔軟化」が進んだことが関与しており、近年では
被災事故や破損は聞かなくなりました
また、破裂部周囲の影響に関しても「理論」であり、火葬された焼骨からの確認はできない状態です。
すなわち、焼骨に対応する職員や家族でも「ペースメーカ有無による差異は確認できない」と考えています。
風評に関しては「論外」であり、医療に従事る者が惑わされる等のことはないと信じています。

 2009年の不整脈学会において、フクダ電子等が「火葬炉におけるペースメーカ」に関する発表をしていましたが、これは
in vivo と in vitro の違いと同じく、実際の遺体での現象としては「発生頻度は低い」と考えています。
その意味で、医療サイドと火葬場サイド(ほとんどは行政であり、広域組合)、葬儀社サイドの「共通認識」が必要であり、
火葬場を所管する「厚労省の見解と通知」は必要です